R I L L

作・春冬さん  

 キリアがフィルに声をかけられた頃、バートとリィルは自分達の部屋でポーカーをしていた。勝負はリィルの全勝で、バートが「もう一回だ!」と何度も食い下がっている状態だった。
 手札を見つめて唸るバートと自分の手札を見比べ、十五回目の勝ちを確信したリィルは何気なく窓の外を見た。見慣れてきたこの風景とも、明日にはお別れだ。
 感傷に浸りかけたリィルは、あるものを見て現実に引き戻された。
 宿から出て行く二つの人影、それは―フィルとキリアだった。二人は昨日知り合ったばかりだ。その二人が何故…。
 リィルは少し思案して「悪いバート。俺ちょっと外出てくる」と言って上着に手をかけた。
「なっ!これから俺の華麗なる逆転劇を食らわそうと…」
「残念でした」そう言ってリィルは自分の手札をバートに渡すと、部屋から出て行った。
 残されたリィルのトランプは、ロイヤルストレートフラッシュの役を作り上げていた。
 
 追ってどうするつもりなんだろう。よく考えれば至極当然な答えにリィルが辿り着くまでそう時間はかからなかった。しかし、気付いた時にはもうすでに二人の声が聞こえる範囲に入っていた。昼間は喧騒に包まれるメインストリートも、今は風と木々のざわめきが聞こえるだけだ。
 リィルは引き帰そうと考えたが、フィルの声が聞こえて慌てて物陰に隠れた。
「でも暫くは会えないからさ……。俺……」
 フィルの言葉を聞いて、リィルはいよいよ自分が非常にまずい場面に来てしまったと後悔し始めた。まさか身内の『そういう』場面を聞くはめになってしまうとは…。
 そんなリィルの心情など知るよしもなく、フィルが小さく「好きなんだ」と続けた。
 少しの間沈黙が流れ、キリアが「ごめんなさい、私…」と呟いた。
 その言葉に何故かとても安心した。それがどうしてなのかは分からなかったが…。
 
 部屋に戻るとバートが机に向かって何かを書いていた。珍しいなと思いつつ「ただいま」と声をかける。
「おかえり、リィル。今度はこれで勝負だ!」そう言ってリィルの目の前に差し出された二枚の紙には軍艦ゲームの升目が引かれていた。
「いいよ、今度も絶対勝たせてもらうからね」
 上着を脱ぎながら、リィルは早速作戦を練り始めた。


 春冬さんが送ってくださったリィル×キリア小説です! ありがとうございました〜!
 「小説」をいただいたのは初めてだったので、ドキドキしながら読みました(笑)
 バートとリィルのやりとりがとても「らしく」て笑えます。そしてやっぱり兄の思いきった行動が気になってしまうリィル。「どうしてなのかは分からなかったが」安心してしまうリィル。薄々と感づいてはいるんでしょうけれど……
 というわけでりっさん片想い小説でした♪ キリアさんのほうはどうなんでしょうねえ。