エ ル ザ の 謎

 お昼時。ここはバートの実家、食堂「シャイニング・オアシス」。バートとリィルとフィルはAランチ四人前を仲良く三人で分け合って食べている。
 「ふと思ったんだが……」
 冷奴にポン酢をかけながらフィルが口を開いた。
 「「ん?」」
 生卵をかき混ぜていたバートと納豆をかき混ぜていたリィルの声が重なる。
 「エルザって親父とお袋、どっちに似たんだ? どっちにも似てないような気がするんだが」
 「エニィルさんとルトさんか」
 バートはいつもにこにこ楽しそうな黒スーツに眼鏡の男性と、ハンサムだが何かと世話を焼いてくれる「おかん」な女性を思い浮かべる。
 「んー、確かにどっちにも似てねーなあ」
 「……ユーリアさんじゃない?」
 リィルがぼそりと呟く。フィルはテーブルをだんっと叩いて立ち上がった。
 「待てリィル今のは問題発言だぞっ」
 「へ? どうして」
 「それはつまりエルザにはオヤジとユーリアさんの血が実はバート君と姉弟ぐっはあっ」
 後ろからハリセンで殴られてフィルは思い切り前につんのめる。そこには恐い顔をしたバートの母親ユーリアが、ハリセンを斜めに構えて立っていた。
 「なに昼っぱらから良からん妄想してんのフィル君! 私はクラリス一筋よっ!」
 ユーリアはフィルの耳元でメガホンを作って思い切り叫ぶ。確かに姉貴と似てるなあ、とリィルはのんきに思う。
 「いーい? 私とエルザちゃんが似てるのはね、」
 と、得意げに語り始めるユーリア。
 「エルザちゃんはほとんど私が育てたようなもんだから」
 「「「え?」」」

 *

 〜 エルザ0歳 〜
 エニィル夫妻の家に押しかけているユーリア。
 ユーリア「かわいーかわいー。抱かして抱かして〜。うっわぁ〜軽い〜。いいなあこの赤ちゃん肌……(延々)」

 〜 エルザ1歳 〜
 エニィル夫妻の家に押しかけているユーリア。
 ユーリア「やっほールト! 今日も新作離乳食つくってきたわよー! どう、エルザちゃん? おいしい?」

 〜 エルザ3歳 〜
 エニィル夫妻の家に押しかけているユーリア。
 ユーリア「いーいエルザちゃん。気に入らない男子は殴って言うこときかすのよ」

 *

 (((ユーリアさん(母親)……つくづく余計なことを……)))
 バートとリィルとフィルの三人は心からそう思った。